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おおかみこどもの雨と雪 感想

  • 2012-08-18 (土)

おおかみこどもと雨と雪の感想をTwiterでも書いたんだけどこっちにもまとめたものを書きます。ネタバレが多分に含まれるので未見の方はまず映画を観る事をおすすめします。

富野監督が絶賛した様におおかみこどもはアニメ史上に留まらず映画史上の傑作だと言えると思います。アニメの技術、演出、脚本どれをとってもすばらしい出来で、これを描ききった細田監督は本当にすばらしい!ただ若干演出がわかりにくくあまり面白くなかったという意見が散見されるので僕なりの解説を書いてみようかなとか。

こういう自然と人間、おおかみおとこという特殊な設定だと差別の問題を下敷きにしたり自然=善、人間の文明=悪という図式に陥りやすいと思うんですが、そこをすっとばして人間の強さを描ききったところに僕は感動しました。こういう演出はいっさい出てきません。たぶん細田さんの強い意志があってこういうカタチになったんだと。

映画がはじまってまずおやっと思ったのがおおかみおとことのセックスシーンです。これは自分がおおかみおとこであるということを花に打ち明けたあとのシーン、ぶっちゃけオオカミのままセックスする必要はないです。しかもおおかみに変身したあと家に戻るまでに一旦人間の姿に戻っているはずで(ここは飛ばしてるけど)もう一度オオカミになる必要はないんですが、これは花が自分が愛した男がおおかみおとこであるということを強く受け入れるという演出だと思います。

その後花はおおかみおとこの子どもを身ごもり雨と雪出産したあと、おおかみおとこは突如死んでしまいます。花がおおかみおとこを探しに外に出ると河でおおかみの遺体を目撃するという非常にあっさりした最期なんですが、これは多分オオカミの姿でキジを追い車に轢かれたんだと。車のヘッドライトが近づく>光に照らされるおおかみのアップというのをいれるだけの簡単な演出でも表現出来るはずのこのおおかみおとこの死の真相を描かなかったのは前述した人間の文明=悪という解釈をされたくなかったんじゃないかなーとか。そしておおかみおとこの死はオオカミとして人間社会で生きていく事の難しさ厳しさを表してるんだと。

でも花というキャラクターは二人の子どもを残して死んでしまったおおかみおとこにたいして恨みや泣き言を一言も発しません。これは人間性や人間の弱さを表現するのに使いやすいファクターなんですが(そういうシークエンスが出てくると思ってずっと観てた)いっさい描かれません。これはほんとうにほんとうに花というキャラクターの強さというのを表現したかったんだと思います。ネットの感想で花に感情移入出来ないって意見があったけどこのせいです。時かけの様に鼻水流して泣かせて「なんで私たちを残して死んでしまったの!」という台詞をひとつでも吐かせたらたら感情移入出来る人も増えたかもしれません。でも花は泣かない。なんで笑ってるんだって台詞を農家のじいさんが言いますがこれは実は観客の声です。花はそれを笑い飛ばします。これは細田監督の笑いです。こういうのめっちゃおもろいし大好きです(笑)。

都会を離れ田舎暮らしをはじめますが、ここで村人の差別とか重く描かれたら嫌だなーと思って観てましたが若干はあるもののさくっと終わらせてひと安心。それで雪山を駆け抜ける花と雨と雪のシーンに移りますがここは物語が一段落した解放のシークエンスです。たぶんもともと描きたかった映像だとは思うんですが、このあと雨が河に落ちラストシーンまでの雨のギアが入ります。ここ物語の折り返し地点になります。

花も雨も小学校に通う事になるんだけど、家から出た道が学校へと続く道と山へと続く道二つに分かれています。これはおおかみを選択するか人間を選択するかの暗喩です。このシーンを観てああ、雨はオオカミになることを選択してしまう!と切なくなりました。案の定雨は学校にあまり行かなくなりそのことについて雪はいらだちを覚えるわけでこれが最後の姉弟喧嘩に発展しますが、このシーンで雪は雨が小さくひ弱な子どもではなく一人前のオオカミになったことを悟ります。そしてこの時点で雪は雨がオオカミとして生きる事を悟ったんじゃないかなーとか。お風呂場でうつむいて泣いていたのは喧嘩で負けたとかじゃなく雨がオオカミを選択することに気づいてしまった涙なんじゃないかなーって。実際最後の雨がいなくなってしまうシーンでは雪の心情は描かれないから。

でラストシーン、大雨の中雪を探しに山へ入った花を雨は救い出して崖の見える駐車場まで運びます。あれ?なんで家まで運ばないのかな?って思ったんですが雨は自分はもう立派な一人前のオオカミだから安心して欲しいというのを花に見せたかったんだ!と。思ったんですが、家に帰ってああこれは宮崎駿に対するメッセージだなと。最後のシーンはもののけ姫のオマージュです。崖を駆け上りてっぺんで雨が上げる遠吠えは花に向けてのものであると同時に一人前になった細田監督が宮崎駿に上げた遠吠えでもあるなーと。宮崎駿にこの遠吠えはとどいたのかなー?とか思いました。

ぶっちゃけ村上春樹が好きな人は楽しめないって聞いてたんであまり期待してなかったんですが全然そんなことはなく本当に本当におもしろかった!細田監督すばらしい作品ありがとうございます!

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