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鉄腕アダム006

めずらしくひばりが鳴いている。こんなことは滅多にない。雨があがり湿り気を帯びた風が吹いていて、そして。

イワンはキャンプ用の折りたたみ椅子に座ってのんきに万華鏡で空を覗いている。

「それ面白い?」

「面白いよ。シンプルなアルゴリズムのくせに一つとして同じ形がない、よって飽きない。」
口が半開きのイワンの顔は少し間抜けだ。本当に頭のいい人間はどこか子供っぽいところがある。もしかしたら早く大人になりすぎて、大人になってから子供の時間を消費するのかもしれない。

「人間の一生は二種類あってね、選択肢があるものは人生という。生と死の間には実にいろいろな形があるのさ、この万華鏡で覗いた世界みたいにね。」

ーーー選択肢がないものは?
イワンを見る。

「選択肢がないものを人は運命という。」
得意げだ。

「じゃあ運命を背負った人は退屈だね。」
「さあどうだろう?運命は……」


缶ジュースを握りしめ、グレーの瞳は僕をじっと見つめている彼女はこの物語のヒロイン、名前はイヴ。僕の技術を応用した作られたセクサロイド、そのプロトタイプだ。アダム計画の資金の一端を担っている。今では火星からも注文がくるほどの人気商品だ。ある経済学者は言う。売春は世界最古のビジネスだと。

「……突然やってくるものでもある。」
イワンは万華鏡をしまう。

「君の肋骨で作られた、君の妻さ。駆動系は簡略軽量化されてて、人工脳も一世代前のものに改良を加えたものだけど、ほとんど君と同じだよ。もともとは民間の会社に委託した君の量産機だったらしいけど過酷な環境に耐えられなかったんだな。まあ性器はさらにまた別注らしいけど。」

イワンは万華鏡を丸めた指に出し入れして、下品に笑う。

「……ふざけてる」
吐き出すように言う。

「ふざけてるのかどうかは置いといて。事実、君の維持費は半端なくかかるんだ。苦肉の策さ。」
イワンは丸めた指からするりと万華鏡を抜き取る。

「娼婦に食わせてもらってる男はどの映画でも最低だ。」

「そうでもないぜ、クリスチャン・スレーターがでてる映画でさ、……あーなんだ思い出せない。」
イワンは軽く握った拳でコツコツと額をたたく。

「トゥルーロマンスだろ?しかも売春婦に食わせてもらってる映画じゃないよ。主人公はただのオタクだし。」

「オタクは監督だろ。」

「違う、脚本家がオタクだ。」

「まあいい、アダム。お前はそういう運命だ。」

気がつくとひばりの声はやんでいた。

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